ゴヤの黒い絵、アフガニスタン戦争を悲しむ棍棒で決闘

『 棍棒で殴り合う2人の男 』 を教訓にして

感動の共有、のぶながTOPページへアメリカ合衆国での民間機乗っ取りテロ事件を直接の原因として始まった アフガニスタン戦争の情報を知れば知る程に、歴史を自ら創ってきた人間を、人間社会を考えさせられる。

原因、当事者は違えども、同じような悲劇が繰り返されている。
■ 歴史を学ぶ事という事は、間違いを繰り返さない。 良かった事を知恵として今に活かして応用する。
1個人としては、こうでありたい、こうあるべきだと思うのだが、、、、、、 

■ 1746年に生まれ、1828年に亡くなった、≪フランシスコ・デ・ゴヤ Francisco de Goya≫の時代も、 ヨーロッパは、ナポレオンの出現した時代であり、 スペインは、立憲主義 VS 絶対主義自由派 VS 王政派、と不和と対立、圧制・暴力の暗い時代であった。

ゴヤの晩年、1819年〜1823年に(74歳頃)、隠れるように隠遁生活を送った聾の家の壁に描かれた≪黒い絵の連作≫は、ゴヤの鋭い人間観察の成果が凝縮した偉大な作品となっている。

■ ≪黒い絵≫の連作の一つ棍棒での決闘が、特に<時代・地域を超越した>ものとして迫ってくる。
足が大地に埋もれて逃げられない 「 棍棒で殴り合う2人の男 」 が描かれている。

☆ 足が大地に埋もれて逃げられない → イスラエルとパレスチナアフガンの民族対立親子の憎愛 等など
歴史的にどちらも逃げられない、、、恋人、夫婦のいがみ合いなら別れれば解決するけど、親子の憎愛は逃げられない。
描かれた具体的な原因に留まらず、時代・地域を超越した内容だから、現代の我々にも痛切に教えようとしている。
中東の民族問題、スペインの内乱、戦争、など現実の紛争を的確に抽出し表現している。

時代を超えて、歴史の教訓を教える凄い絵、画家だと思う。
パレスチナ、テロ問題の当事者達に、見て考えて欲しい。 これと同じなんだから、殴り合いを止めるしかない。 キリがない。

アフガニスタンの問題も、自国の民族抗争に、ユダヤとパレスチナという長い歴史的抗争ゆえに逃げられない問題に、
米国の軍需問題が絡んで、テロとなり、新たな歴史的対立を増幅させていると思われる。

欧米文明 VS イスラム と、より対立の構造を拡大させている現状は、逃れられない決闘の問題把握そのものである
この憎悪の連鎖・輪廻をどこかで断ち切らねばならない。

ゴヤの作品が語りかけるテーマは、古くなるどころか、現代にも現実性をおび、今日性を失わず、現代人に強く問い掛けてくる。

スペインの高原大地で、血を流して殴りあう
足が大地に埋もれ、逃げられない!
相手が倒れるまで止められない
こちらが止めれば、殴られるのだ!

↓足元の拡大図
足の左に牛が2頭、右側にも家畜が多数放牧されている
この2人は巨人なのだ、個人ではない
巨人に表現されているという事は、寓意なのである。
運命的に逃れられない対立する勢力・民族・国、、、あらゆるものに当てはまる


人は独りでは生きられない。
社会的に、他人と共存しなければならない。

逃れられないならば、、、、、
←人と人の関係は、こう在りたいものだ

不信より信頼、軽蔑より尊敬

それには、誠実であり、能力を高める努力が必要
↓ ゴヤ作の版画集 『 戦争の惨禍 』 より
1808年から6年も続いたスペイン独立戦争を題材にしている。
フランス軍、イギリス軍、スペイン軍、スペイン民衆のゲリラ闘争が入り乱れ
殺人、暴行、拷問、放火、憎悪、復讐の錯乱状態であったらしい
戦争の惨禍は、使用する武器が変れども
現代でも変らないはず。

爆弾投下の破壊の跡には
残酷な光景があるに違いない

アフガニスタンでもパレスチナでも
その悲惨さを思えば
軽軽しくは、戦争に GO とは言えないはず!

日経新聞(春秋)に紹介された『アフガン帰還兵の証言(日経新聞社)』の一部
「憎しみが意識をくもらせる。 家畜に至るまで皆殺しにした。」
「オトリの赤ん坊を助けたばかりに命を落とす将校。」
「あまりの惨状に心を病み、笑いが止まらなくなった従軍看護婦。」
「俺たちが英雄でないのは仕方ないとして、今度は俺たちを人殺しだって言うのか!」


ゴヤ作ではないが、  30年戦争を題材にした作品
↓ ジャック・カロ作≪戦争の悲惨≫1633年

戦争状態になれば、人間は変る
他人の痛みが快感になるのだろうか?
爆弾投下の指令に、その重大さを考慮されているだろうか?

↓ 人間、時代 を鋭く観たゴヤの名作 ↓

『砂に埋もれる犬』 または
『流れに逆らう犬』

砂の流れは<運命>
埋もれてしまう運命を意味するのか
流れに向かう意欲を現すのか
黒い絵(2)へ


『 巨人 』  または
『 パニック 』

ナポレオンのスペイン蹂躪の寓意
巨人はナポレオンか宰相ゴドイ、
逆にスペインを守る守護神か



↓『 瀬戸物売り 』
タピスリーの為の原画






プラド美術館で見た現物 95/8

ゴヤは、若い頃はタピスリーの為に
このような明るい作品ばかり描いていた。

年を重ねるにつれ
人間を見つめる観察眼は鋭くなり
晩年、客の為でなく
描かざるを得なかった『 黒い絵 』 を!!
人類の為に描いたのだ。

時代を、地域を越えた偉大な画家なのだ。


ゴヤの時代は、スペイン王宮(男女関係)、内政、列国の介入と、複雑に絡み展開している。 これを短い伝記本の文字をたどるだけでは理解が困難になる、と言うより、誤解してしまう危険が大。
ゴヤの伝記DVD(IVCF−205)は、スペイン国営テレビ製作で、5時間13分の大作であり、複雑な時代が映像で理解しやすく、記憶にも残り易い。 \12,800と値は張るが、偉大なGOYAを知るには、お薦め映像である。

現存の宗教は、和解、平和に貢献できない、無力であるどころか、
争い、戦争の原因に、鼓舞する原動力になっている。

真の聖人、偉大な指導者の出現が、待ち望まれる。     2001-11-09 掲載

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